昨日の定例サロンのとき
会員のみなさまがたを待っているときに
城山三郎さんの詩が目にとまりました
「そうか、もう君はいないんだ」遺稿がテーマになったときに
見つけ出した詩です
「妻」
夜更け 目覚めると
枕もとで何かが動いている
小さく呟くような音を立てて
何者かと思えば時計の秒針
律儀に飽きることなく動く
その律儀さが不気味である
寝返りをうつと音は消えた
しばらくして穏やかな寝息が聞こえる
小さく透明な波が押し寄せては引く音
これも律儀だが冷たくも不気味ではない
起きている間はいろいろあるが
眠れば時計より静か
「おい」と声をかけようとしてやめる
五十億の中でただ一人「おい」と呼べるお前
律儀に寝息を続けてくれなくては困る
(終)
遺族となった人にとってこの詩は胸に迫るものがあります
静かに寝ているときだけが
がんからも、がんの恐怖からも解き放たれる時間
このままこの時間が続いてくれることを
きっと誰もが感じていたのではないでしょうか
しかし、時は残酷に時間を刻み
やがて、その時を迎えることになるのです
そしてその悲しみを乗り越えようと
私たちのサロンはあります