第9回 グリーフケア資料 (最終回)
グリーフケア(悲嘆回復)について
それは、死別を経験した遺族の悲しみからの回復
死別で失うのは、自分の命ではありませんが、失った命は共に生きてきた証であり安心・安全なよりどころだったのです。故人と遺族はお互いの人生の中で生活を共有してきていました。大切な人を失った生活では、新しい生活を見いだすことができずに、人生の目標を失ってしまうこともあります。
悲嘆の一般的な経過
- 感覚麻痺の時期・・・死別の事実を受け入れたくないという感情が出ることもある
- 思慕・探索期・・・・故人の面影を追い求める。ゆかりの場所に行ってみたくなる
- 落ち込み・抑うつ期・疎外感を感じて、身体的・精神的にも悪化が起こりやすくなる
- 回復期・・・・・・・現状認識が進み故人を忘れるのではなく、不在に慣れてくる
死別悲嘆に対する援助のあり方
- 情報的な援助・・死別悲嘆で起こりうる反応を遺族に情報として伝え、死別悲嘆が普通に遺族に起こる正常な反応であることを理解するきっかけを提供する。
- 情緒的な援助・・悩みを聞きとる姿勢、共感性を持つ姿勢、優しい働きかけや、歩み寄りを促す姿勢が必要
- 道具的な援助・・死別による生活環境の変化のために、日常生活を行う中で困ったことに対する援助
- 治療的な援助・・死別悲嘆からくる健康障害や精神障害に対する医療機関による援助
悲嘆回復への対応での注意点
良き聴き手に徹する(傾聴)
遺族の心は良き聴き手を望んでいます。言いたい思いに心は満ち溢れているのに、誰にでも話せるものでもなく、ふさわしい聴き手に聴いてもらえる機会を待ち望んでいます。
注意したい言動とは
- 励ましや激励・・・・特に「頑張ってくださいね」は禁句。安易な励ましはしない
- 悲しみの比較・・・・悲しみは主観的なもので個人で異なる。比べることはできない
- 経験の押し売り・・・第三者的な経験上のアドバイスは、マイナス効果になりやすい
- 気休め的な同意・・・安易な同意には誠意の心がこもらないことが多いので要注意
- 叱咤する、制止する・「もう泣かないで」「いつまで悲しんでるの」は相手を傷つける
- 返答に詰まったら・・話をちゃんと聴いているという意思をしっかりと伝える
- 自分勝手な判断・・・悲嘆回復の通説・俗説には間違いも多いので軽々しく使わない
- 知識の誤引用・・・・悲嘆自伝や欧米の学説などが当てはまるとは限らない
- 宗教観の押し付け・・不幸につけこむ詐欺師や扇動者の存在に要注意
- 目的の再確認・・・・相手が感情を余すことなく打ち明けられる心境を保つこと
- 話の腰を折る・・・・語りかけ、説明する立場の人(例:医師・僧侶・教師等)に見られがちな行動。聴き手が話をリードすると遺族は話づらくなる