令和2年2月19日
佐賀県医療センター好生館・緩和ケア症例検討会から
遺族の体験発表 ①
37歳の夫を26年前にわずか3か月の闘病の後、スキルス胃がんで看取りました。
専業主婦だった私は8歳、5歳、生後8か月の3人の子供を抱え大きな悲しみの中、途方に暮れました。
その頃はまだ、緩和ケアやインフォームドコンセントなども浸透しておらず、ましてやグリーフケアなど全くありませんでした。
夫のいない時間を生きていくことが辛すぎて、死んでしまいたいと思いましたが私がいなくなれば両親を失うことになる子供の事を思うと、それも出来ず本当に辛い日々を過ごしていました。親や、兄弟、友人などの前では心配を掛けまいと明るく振る舞っていましたが心の中は孤独一色でした。人と会うこと、出かけることも少なくなり2年ほど引きこもりに近い状態で過ごしましたが、子供達の成長をみているとこれではいけないと思うようになりました。友人の勧めもあり自分のような家族に寄り添える看護師になりたいと41歳で看護学校に入学し45歳で看護師になり緩和ケア病棟で働き始めました。
終末期の患者さんに付き添っておられた家族がやがて遺族になられ、あの頃の私と同じように苦しんでおられました。鹿児島でグリーフケアサロンを立ち上げ、ひと月に2回、昼と夜に開催しておりました。
ドアの向こうにどんな人が待っているのだろうかと思うと、初めて遺族サロンのドアをノックすることはハードルが高く、案内の新聞の切り抜きを半年以上、もっておられ、やっと来られた方もいました。
「こういう場があることを知らなかった。もっと早く来れば良かった。」との声も聴かれました
大きな病院、主に緩和ケア病棟のある病院では1回/年、遺族の会を開催しているところもあります。病院のスタッフによるグリーフケアは亡くなられた患者さんへの共有する思い出話など出来て良いと思います。
でもグリーフケアは医療者でも難しい分野であり「身内を亡くしたことが無いから遺族の気持ちがわからない」、「どう対応してよいか、又なんて声を掛けて良いかわからない」との声も多く聞かれます。医療現場は日々の業務に追われ大切なケアだと認識はしていてもなかなか、出来ていないのが現状だと思います。
医療者の方がグリーフケアに関心を寄せて下さり、がん遺族による遺族サロンがあることも伝えて頂けたらと希望します。