2020年3月
3月 16th, 2020年
2月19日緩和ケア症例検討会から ③
2020/03/16令和2年2月19日
佐賀県医療センター好生館・緩和ケア症例検討会から
遺族の体験発表 ③
私の夫は6年前に胃がんで亡くなりました。最愛の人を失う気持ちは、どんな言葉を使っても決して表現できません。泣いても泣いても涙は枯れませんでした。自分でも抱えきれない思いを、持っていく場所もありませんでした。
誰かに聞いてほしいけれど、身内の人間、とくに自分の母親には、元気な姿を常に見せなければ、という強迫観念があります。一度、泣きながら姉に電話したことがありましたが、励ましや姉自身の経験談が返ってきて、心が癒されることはありませんでした。
友だちに話しても、やはり気を遣うこともあるし、何より、私が一番大切にしたいと思っていること(私と夫の間で交わした会話や、夫婦の思い出)などには、家族以外には触れてほしくないという思いがあり、すべてを吐き出すことはしませんでした。
また、夫と親交の深かった方々との交流だけは、唯一安らげる時間でしたが、その方たちと共有できるのは夫の生前のことだけで、死後の辛すぎる思いはやっぱり話せませんでした。
結婚記念日、誕生日、息子の就職など、本来なら家族で祝いたかった日や、命日などの悲しい日にも、一人で思いを馳せるしかありませんでした。「嬉しいよね」「悲しいよね」「そうだね」と語り合える夫はもう居ません。
時間とともに悲しみが薄れるわけもなく、眠れない、眠っても嫌な夢ばかり見てしまう、些細なことに過剰に反応して迷惑をかける、何にもやる気がでないなど、苦しみは募る一方となり、医療機関を頼ってみようと考えました。カウンセラーや精神腫瘍科医をネットで検索するうちに、この遺族会に出会いました。藁にもすがるような思いで訪れた私を、メンバーの方々は温かく受け入れてくださいました。
遺族会のサロンでは、その時に話したいことを、自分のペースで話せます。それを、最後まですべて聞いてもらえます。返事はなくても、共感してもらっているのが伝わってきます。
身内にも友人にも分かってもらえなかったことが、りんどうの会では全て分かってもらえたような気がしました。そして、心の奥底でずっとよどんでいた思いを、話したい、聞いて欲しい、という気持ちになり、話せば共有してくれる仲間がいるという安心感が生まれ、話してよかった、という満足感が得られるようになりました。
ここは私にとって一番の安らぎの場になっています。