2024年11月
11月, 2024年
グリーフケア・サロン「りんどうの会」に寄せて
2024/11/30今年64歳になり、人生(ライフ)を考える。
64年間、生きて来たから好きなこと、長く続けていることは、ある。
題名の「グリーフケア・サロン・りんどうの会」とは、がん遺族の会なのです。
身近な人をがんで亡くした方が対象で、毎月2回(夜と昼)にある。
主に夜の会へ出向く。
私が入会したのは、11年前くらい。
夫を亡くした時、私は49歳だった。
来年、17回忌が待っている。その事を回りに言うと
「早いですね」と、必ず返ってくる。
早いと言えば、そうなのだろうが、長かったと言うのが実感に近い。
11年〜りんどうの会へ通ってきた。
がんの告知を乗り越え、勇気を持って今を生きている患者さんや経験者をサバイバー。
サバイバーの家族や遺族、支援者をケアギバーというのも会で知った。
果たして私は、ケアギバーとして夫に向かい合っていただろうか。 今も後悔ばかり。
ある日の定例会でのこと。顔なじみの会員さん達と語り合う。主催者の挨拶があり、順に1人ずつ話をする。自身の近況や、亡くした思いなど、伝える。
話すことが特にない、話したくない時は、しなくて良い。 聴くだけでも良いのです。
皆さん、静かに耳を傾けておられる。
「傾聴」というのも知った。
ある会員さんが、最近進めておられる、断捨離の話をされた。
亡き奥様の靴を、どうしようか迷ってしまい置いたままにしていた。
それを息子さんが見て、買った時のことを話し出した。
母と2人で店へ行き、自分の靴が決まった。ふと、
母が履いていた靴が古びているのに気付いたと。
「母さんも買おうよ」 「そうね、ついでに良いわね」と、新調したものだそう。
この1足の靴に、そんな想い出があり、また話をしてくれた息子の気持ちが嬉しかった。と、話された。
皆さん、うんうんと、頷き、優しい時間が流れる。
私は、とっさに「車のシートの下に箱、引き出しのような物ありますか、私は夫の靴を入れています」と言った。 すると、他の会員さんが「私も入れてますよ、車のシート下に、御守りみたいなものでね」と、言われるではないか。
もう、10年以上も車のシート下に夫の靴を入れてるのは自分くらいなものだろうと、思っていたからびっくりした。そして、嬉しかった。
夫の靴は、両足が腫れてきてそれ迄履いていたものが入らなくなったので、一緒に店へ行き求めた物だった。素材が柔らかく、脱ぎ履きがし易いと、夫は気に入ったようだった。
その後、闘病を頑張り、旅立った時にもベッドの下にその靴はあった。
1人になり、車を運転する時から、シートの下に入れたのは自然な気持ちだった。
車を替えた時、その靴をまた入れた。
どこへ行くにも、不思議と安心のような、一緒にドライブをしている気がした。 御守りみたいな、その感じが良く分かる。
会の帰り道、なんだか嬉しくて夜空を見上げる。
翌月、顔なじみさん達が集まってくる。
断捨離中の会員さんが、「岩永さん、靴を車のシートの下に入れましたよ」と笑顔で声を掛けてこられた。
「そうですか、良かったです一緒ですね」と、なんだか嬉しくなり笑い合う。
グリーフケアサロン、家族や身近な人をがんで、亡くした人が集い、語り合い、悲しみを分かち合う。
入会時に説明を読んで、話をするのも勇気を要した。今は、会の時刻が近づく夕暮れ時になると、自然に足が向く。
「今は悲しみの中に居ても、いつか笑顔が戻る日が来ます。それは、亡くなった愛する人を忘れたという事ではありません。心の中に悲しみの居場所ができたと、いうことです」
会のメッセージの意味がしみじみと、分かるような気がする。 これから〜ささやかにずっと続けていけたら…と、思うこのごろなのでした。 end
(2024.12月 岩永淳子)