グリーフケア(悲嘆回復)とは
それは、死別で失うのは自分の命ではありませんが、失った命は共に生きてきた証であり心のよりどころでした。 生き残る悲しみは時として死ぬことより辛い時もあります。時として故人を恨めしく思うこともあります。 生き残ったことへの罪悪感や、「だれも私の気持ちを分かってくれない」と一人で悲しみ苦しんでいる、そんな遺族の悲しみからの回復。 それがグリーフ・ケアの目的です。
悲嘆の一般的な経過
- 感覚麻痺の時期
死別の事実を受け入れたくないという感情が出ることもある。 - 思慕・探索期
故人の面影を追い求める。ゆかりの場所に行ってみたくなる。 - 落ち込み・抑うつ期
疎外感を感じて身体的・精神的にも悪化が起こりやすくなる。 - 回復期
現状認識が進み故人を忘れるのではなく、不在に慣れてくる。
死別悲嘆に対する援助
- 情報的な援助
死別悲嘆で出現する反応(悲しみ)が遺族に起こる正常な反応であることを理解するきっかけを提供する。 - 情緒的な援助
悩みを聞きとる姿勢、共感性を持つ姿勢、優しいはたらきかけや、歩み寄りを促す姿勢を持つことが大切。 - 道具的な援助
生活環境の変化からくる、日常生活で困ったことに対する援助。 - 治療的な援助
死別悲嘆からくる健康障害や精神障害に対する医療機関による援助。
悲嘆回復への対応での注意点
グリーフ・ケアの実践の中で留意すべきこと
- 励ましや激励
特に「頑張ってくださいね」は禁句。安易な励ましはしない。 - 悲しみの比較
悲しみは主観的なもの。個人で異なる。比べることはできない。 - 経験の押し売り
第三者的な経験上のアドバイスは、マイナス効果になりやすい。 - 気休め的な同意
安易な同意には誠意の心がこもらないことが多いので要注意。 - 叱咤する、制止する
「もう泣かないで」「いつまで悲しんでるの」は相手を傷つける。 - 返答に詰まったら
話をしっかり聴いているという意思を伝える。 - 自分勝手な判断
悲嘆回復の通説・俗説には間違いも多いので軽々しく使わない。 - 知識の誤引用
悲嘆自伝や欧米の学説などが当てはまるとは限らない。 - 宗教観の押し付け
個人の意思にかかわらない宗教観の押付勧誘はしない。 - 目的の再確認
相手が感情を余すことなく打ち明けられる心境を保つこと。 - 話の腰を折る
語りかけ、説明する立場の人(例:医師・僧侶・教師等)に見られがちな行動。聴き手が話をリードすると遺族は話づらくなる。
死別悲嘆に対良き聴き手に徹する(傾聴)
グリーフ・ケアの基本は「傾聴」にあります。心の中にあるいろんな思いを吐き出せる環境づくりこそが、最も大切なことです。 「傾聴=耳と心を傾けて、しっかりと聴き取るという姿勢」がなければ、遺族の心を開かせることはできません。 安心して涙を流せる場所で、一人ではないという気持ちになれることが大切なことです。